天然ゴムと合成ゴム

天然ゴム

ゴムの木に傷をつけると白い粘性のある樹液が浸み出してくる。この樹液を〔 ラテックス 〕という。ラテックスは〔 コロイド 〕溶液で,酸を加えると凝固する。この凝固したものを〔 生ゴム 〕または天然ゴムという。生ゴムの成分は 〔 イソプレン 〕CH2=C(CH3)-CH=CH2が付加重合した構造のポリイソプレンである。生ゴムのポリイソプレンはイソプレン単位の二重結合が〔 シス 〕型であり,分子鎖が折れ曲がり不規則な形となる。そのため,分子鎖間はすき間が多くなり分子間力があまりはたらかないので,結晶化がほとんど起こらない。一部の植物から得られる樹液であるグッタペルカはトランス型のポリイソプレンで,直線的な分子鎖となるため分子間力がはたらき硬い物質となる。

 
 

天然ゴムの分子内では,単結合のC-Cを軸とした回転と,固定されている二重結合のC=Cがつくるすき間によって,部分的に熱運動が行われる。この熱運動をミクロブラウン運動といい,これにより弾性が現れる。

ゴム分子の二重結合は徐々に酸化され,ゴム特有の弾性を失う。生ゴムは耐熱,耐寒性および耐久性が十分ではなく,実用性に乏しい。そこで,生ゴムに〔 硫黄 〕を58%加え,約140℃に加熱すると弾性が大きくなり,化学的にも機械的にも強くなる。この操作を〔 加硫 〕といい,鎖状ゴム分子の二重結合のところで硫黄原子が架橋構造をつくり,ゴム分子どうしが結合する。日常生活で使われているゴムは加硫を行ったもので,弾性ゴムまたは加硫ゴムという。また硫黄を3040%で加硫すると〔 エボナイト 〕といわれる硬い物質ができる。

 
 

【合成ゴム】

 イソプレンによく似た構造をもつ1,3-ブタジエンCH2=CH-CH=CH2,クロロプレンCH2=CCl-CH=CH2などを単量体として付加重合させるとブタジエンゴム,クロロプレンゴムができる。また,ブタジエンとスチレンやアクリロニトリルを混ぜ付加重合(共重合)させるとスチレン-ブタジエンゴムやアクリロニトリル-ブタジエンゴムができる。

 

例題 次の各問いに答えよ。

(1) 生ゴムを乾留(空気を遮断して熱分解)して得られる炭化水素の名称を記せ。

(2) 生ゴムに数%の硫黄を加えて加熱する操作は何とよばれるか。

(3) 次の合成ゴムの原料となっている単量体の名称をすべて記せ。

    ・・・-CH2-CH=CH-CH2-CH2-CH(CN)-・・・

 

(1) イソプレン  (2) 加硫  (3) 1,3−ブタジエン,アクリロニトリル